『桐島、部活やめるってよ』の貸しビデオが家にあったので見てみました。
2012年日本アカデミー賞で最優秀作品賞などを受賞した作品ですね。
一般的な映画評では、
格差社会としての高校生活を描いた映画、ということになっています。
でも高校生の格差って何?と疑問を持ちますよね。
どうも格差とは、簡単に言ってしまうと次のような評価項目の優劣で決まるようです。
・格好良い←→風貌さえない
・運動神経抜群←→運動音痴のオタク
・彼女がいる、モテる←→モテない
実際、映画には典型的な二人の少年が出てきます。
■一人は「宏樹」(東出昌大):
背が高く、ルックスも良く「沙奈」という彼女もいる。
校庭の一角で時間つぶしにやっているバスケでも、
全てのシュートを決めてしまうくらい運動神経が良い。
そんな宏樹の姿を、屋上から毎日盗み見している「亜矢」は
吹奏部の部長をつとめているおとなしめの女の子。
クラスで宏樹の後ろの席にいながら、人知れず思いを寄せているだけ。
こんな宏樹は、格差社会の上位にいる男子なのです。
■宏樹と対照的なもう一人の男子は、映画部部長の「涼也」:
映画オタクで、クラスの女子にとっては関心の対象外。
たまたま映画館でバドミントン部の「かすみ」と一緒になった涼也は、
この映画の趣味で彼女と仲良くなれるかも、と素朴な期待を持つが、
数日後、忘れ物を取りに戻った放課後の教室で、
かすみが他の男子と親密にしている場に出くわしてしまう。
そんな涼也は、格差社会の下位にいるさえない男子。
そして、もろもろの出来事(映画をご覧下さい)のあと、
物語のラスト近くで、次のような場面がありました。
校舎の屋上で部員たちとゾンビ映画を撮影している涼也と、
友人を捜しに上がってきた宏樹が会話を交わす場面です。
涼也が古い8mmカメラを持っていることに宏樹が気が付きます。
涼也は、父親からアナログの8mmカメラを譲り受け、
それを使って映画を撮っているのです。
これには映画部の中でも異論があり、副部長なども、
「フィルム高いし、現像代もかかるし、絵もきたない」
と身も蓋もない意見なのですが、それでも頑固に使い続ける涼也です。
宏樹の「フィルムで撮ると何かいいことあるのか?」との質問に、
涼也はこう答えます。
「どっちだって同じだ、って言う人もいるけど、
でも、ビデオじゃ絶対出ない味があるんだよ、フィルムには。
特別な力っていうか」
その後、「触っていい?」と言って8mmカメラを借りた宏樹が、
レンズを涼也に向けながら、インタビューのまねごとを始めます。
「監督!将来はアカデミー賞ですか?」
「女優と結婚ですか?」
それに対して、
「それは無理かな」などと答える涼也は本当に生真面目です。
また、
「時々だけど、自分の好きな映画と、自ら撮る映画との繋がりを感じることもあるんだ」
と映画少年としての生き甲斐みたいなものについても言及します。
次に、涼也がカメラを手にして、
逆に宏樹の頭の先から脚元まで、
「やっぱカッコいいね」などと言いながらレンズを向けると、
ファインダーの中の宏樹は何故か落ち着かない表情になります。
そして、自己の内面までカメラに吟味されるかのような状況に耐えられなくなり、
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